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December 04, 2007

『ピエール・モリニエ画集』

澁澤龍彦が、かつて傍系シュルレアリストとして位置づけたフランスの画家、写真家ピエール・モリニエは、アンドレ・ブルトンによって光をあてられた1950年代後半から拳銃自殺を遂げる1976年まで、世界的にもごく一部の好事家たちの関心しかひきませんでした。ボルドーの小さなアトリエに引きこもり、エロティシズムとナルシシズムを剥き出しにしたそのあまりに破天荒で非常識な個性と作品ゆえ、一度たりとも大衆的な認知と人気を手にしたことのないアーティストでした。それにもかかわらず、モリニエに関する研究や著作、カタログ等が各国から今日にいたるまで頻繁に発表され続けているという事実は、芸術活動の根源的な衝動に真に向かいあい、性の多形倒錯的なパフォーマンスの先駆的実践者としてのモリニエ評価がようやく定着してきたからに他なりません(近年フェミニズム研究のアプローチもあるようです)。モリニエは絵画制作の体力が衰えた晩年の十数年を写真家として活動。この時精力的に産み出したフォトモンタージュ作品が没後『シャーマンとその創造物たち』(1995)として刊行され、世界中でピエール・モリニエという特異なアーティストの存在が知られるようになりました。日本では、澁澤責任編集による「血と薔薇 第3号」(1969)での特集や生田耕作によるアンソロジー冊子による紹介とあいまって早い時期からモリニエに対する関心が高まり、作品コレクターもあらわれ、小展覧会がたびたび開催され、またその芸術的影響を受け止めた国内作家たち—四谷シモン、金子國義、森村泰昌らを挙げることができるのではないでしょうか—も多数存在しています。

流通した作品が多く比較的制作しやすいフォトモンタージュにくらべ、モリニエの人生の大半を費やした画業は、ブルトンの序文を冠したフランスのジャン-ジャック・ポウ゛ェール版(絶版)を除くと、本書の底本となっているスイスのベルナール・レチュ版(絶版)くらいしか見当らず、その意味でも本書は世界でも大変貴重な作品集となっています。今回、日本語版復刻にあたり、装丁を一新、ページ数も増やしました。巌谷國士氏の解説とともにあらたに関連人物紹介やフォトモンタージュ作品を参考資料として付すことによって、ピエール・モリニエの入門書としても役立つよう改訂しています。

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