« 佳嶋(ECHO)、feebee各氏がデザイン・フェスタ(5月26日〜27日)に参加します。 | main | 60's の輝ける星、植木等がスクリーンで甦る! »

May 27, 2007

ポーリーヌ・レアージュ生誕100年

グィド・クレパクス画/ポーリーヌ・レアージュ原作/巌谷國士監訳『O嬢の物語I』『O嬢の物語II』

 今年は『O嬢の物語』(54年刊)を書いたポーリーヌ・レアージュが誕生してちょうど100年にあたります。この生誕100年を日本で祝賀しているのはおそらく『O嬢の物語』をこよなく愛する読者の方々とエディシオン・トレヴィル編集部だけかも知れません。一般には評判の良くなかったジュスト・ジャカン監督の映画版『O嬢の物語』も再度映画化に挑戦したエリック・ローシャのブラジル版『O嬢の物語』も含め、汎O嬢萌え状態にある我々としては、是非ともクレパクス版『O嬢』をレアージュ誕生100年祭の今年なんとか復刊したかったわけなのです。
 周知のとおりポーリーヌ・レアージュは覆面作家で澁澤龍彦氏の邦訳版あとがきでもその実作者探しに多くの原稿が割かれていました。結局その正体が著名な英文学者・英文学翻訳家でもあったドミニック・オリーであったこと、さらにそれも筆名で、本名はアンヌ・デクロというバイセクシュアルの美貌の女性であったことなどが分かっています。そして『O嬢』は年長の愛人ジャン・ポーランに書き綴った恋文でありレアージュ唯一の小説でもあったのでした。
 原作はもとより澁澤龍彦版『O嬢の物語』は今もロングセラーを続けているエロティック文学のマスターピースですが、その原作を忠実にコミック化したイタリアのバンデシネ作家グィド・クレパクスの描いた『O嬢の物語I & II』(75年刊)も世界中で長く読みつがれている名作なのです。
 マルキ・ド・サドに傾倒しシュールでエロティックな傑作コミックを次々産み出していたクレパクスの大ファンでもあったロラン・バルト、ロブ-グリエらが初版本に寄稿しています。これらのエッセイも訳出、本書には収録されています。
 クレパクスは1960年代に彼が作り出したスーパーヒロイン「ウ゛ァレンティーナ」の作者として日本でも知られていますが、彼のように教養もあり洗練された大人のエロティスムを描ける作家が活躍したイタリア、ヨーロッパ、そしてそんな世界とシンクロしていた60年代末、70年代初頭の日本の文化状況が、今はとても官能的でいとおしく感じられます(それに引き比べ今の日本は、なんてひからびてエロティスムの欠片もない文化状況なのでしょうか!)。ウ゛ァレンティーナへの、そしてクレパクが産み出すヒロインたちへの偏愛を告白すべく編集子は1999年ミラノのスタジオに氏を訪ねました。その彼も2003年、享年70歳で帰らぬ人となってしまいました。(K)

é.t. : May 27, 2007 11:56 PM

 
エディシオン・トレヴィルについてリンクお問い合わせ