September 02, 2006

サイモン・マースデン写真集『幽霊城』そして『悪霊館

「復刊ドットコム」上、読者のリイッシュー版への熱い想いに励まされサイモン・マースデンの『幽霊城』は、2005年暮れ、エディシオン・トレヴィルから実に9年ぶりの復刊をはたし、大好評をもって迎え入れられた(残部僅少)。そしていよいよ『悪霊館』の復刊である。
 マースデン写真の魅力は、霊域が放つアウラ、すなわち赤外線を使った独自のモノクロ写真表現を通して観るものに訴えかけてくる—人間の闇の情念をたっぷりと吸い込んだ死と惨劇の舞台の—その気の遠くなるような時空間の堆積・濃密さにある。
 マースデンの写真は、人間の闇を呑み込みながら超然としてある場所の歴史性とそれを取り巻く自然に対し、現代人が喪失してしまった畏怖の念やそれを感得する力をふたたび呼び覚ましてくれる。幽霊が出没する2軒の館で育ったというマースデンの感受性と審美眼が捉えた恐ろしくも美しい写真の数々。廃墟や荒れ果てた城館が見せる静謐な佇まいは、死と恐怖の歴史こそロマンティシズムの豊かな源泉であることを我々に教えてくれるに違いない。

*尚今回はマースデン氏のご好意で、エディシオン・トレヴィルの通販サイトで御購入していただいた読者の方に著者サイン入りのグリーティングカードを進呈しています。(パン・エキゾチカ編集部)

é.t. : 12:07 PM

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