July 01, 2005

「バロック・アナトミア」佐藤明

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フィレンツェ大学付属「ラ・スペコラ」博物館の解剖学蝋人形。フィレンツェには天体観測所に由来する「ラ・スペコラ」と呼ばれる博物館が存在し、600体に及ぶ鑞細工の解剖学模型が所蔵されている。「ラ・スペコラ」最大のハイライト「解体されたヴィーナス」と呼ばれる美少女の死体がモデルとなった鑞人形は、ボッティチェッリのヴィーナスさながら真珠のネックレスをつけて横たわっているが、腹部にあたる蓋をはずせるうえに、内臓をひとつひとつ取り出し、最後に子宮の蓋を開け中の胎児を覗くことすらできる。また鍛え上げられた筋肉美の男は表皮をすっかり剥ぎ取られ、血管・神経繊維を露出させた姿でヘラクレスのごときポーズで永遠に静止している。キリストを思わせる若い男の首は、頭蓋骨を切り開かれ血肉で装飾されたバロックの劇場のような脳を晒している。これら17世紀末から18世紀にかけて作られた精巧無比な鑞細工は、昨今のプラスティネーションの流行と同様、当時の一般大衆の好奇を強烈に刺激した解剖学ブームと呼応したものでもある。純粋な学究的価値を超越し、死の匂いを湛えた濃厚なエロティシズム溢れる蝋人形を、あくまで美術作品としてとらえた佐藤明の写真は医学的な記録写真としてとらえたタッシェン版と全く異なる優美さと荘厳さをたたえ本書を比類のない存在たらしめている。

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2,800yen(税抜)

155mm×216mm
100頁/ハードカバー
ISBN 4-309-90637-0 C0072



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