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July 08, 2005

トレヴィル1997年版『ベクシンスキー』出版をめぐって。(その1)

ph_050708_01.jpgベクシンスキー作品を知ったのは、1990年代のはじめの頃だったと思います。銀座のイエナ書店(贔屓の洋書店だったんですけど残念ながら今はお店を畳んでしまいました)で見つけたRamsay社から出されていた『BEKSINSKI』という画集でした。全編ひたすら、死、腐敗、廃墟といったイメージがちりばめられた荒涼とした風景のなかに、時折、ミイラ、もしくは風葬された遺骸のような、あるいはゾンビかクリーチャーのようなものが登場する禍々しい夢魔的な作品集でした。

まず、そのパノラミックな廃墟描写の素晴らしさに衝撃を受け、次に顔相や表情を喪失し骸とも生体とも判別のつかないクリーチャーたちに微かに漂う死とエロスの気配、これにまた魅せられ、作品の今日性を強く感じましたね。これは得体の知れない作風の画家である、尋常ではないと。何としてでも日本に紹介しなければ、と。そこでこの本以外にベクシンスキーの画集はないのか探し回るようになりました。

当時、ギーガーの画集『ネクロノミコン1』に解説文を寄せいただいた伊藤俊治さん(現東京藝大教授)が提唱した『生体廃墟論』(1986年、リブロポート刊)というコンセプトに触発され、現代ヴィジュアル・アートの世界で活躍する内外の作家たちが次々と生み出していたエロス的身体の未来型のを「バイオマニエリズム」というテーマで纏められないかとずっと考えていたところだったので、このベクシンスキーという作家の発見はとても大事件でした。

伊藤さんの『生体廃墟論』という本には、現代の身体表現を考えるうえでいろんな刺激的アイデアが詰まっているのですが、その編集者的一解釈が「バイオマニエリズム」と名付けた、ある種の美学的高みまで登り詰めたグロテスクかつエロティックな身体の発明だったんです。ギーガーのバイオメカノイドはその究極的創造物のひとつだと思います。 (K)

é.t. : July 8, 2005 11:55 AM

comment

ベクシンスキーのスゴさに遅ればせながら、
気付いてしまいました。かなり格好良いですね!

投稿者 カワグチ : July 8, 2005 03:50 PM

 
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