« 追悼坪島孝監督! | main | 天野可淡はどこへ向かっていたのか? »

November 01, 2007

11月1日、天野可淡の命日に寄せて。

 今から17年前の1990年の11月1日午前11時10分。不世出のドールアーティスト天野可淡がバイク事故によってこの世を去りました。享年37歳。
 彼女が遺した人形たちは写真集としてその後も永きに渡り人々を魅了し続けています。さらにこう表現することが許されるなら、彼女の人形は人々の心を癒し、人生に傷つき苦しみを感じていた人々にもその不思議な魅力をたたえる人形の力によって「生」への感謝と勇気を与え続けていると。
 編集部は今『KATAN DOLL RETROSPECTIVE』の復刻版制作の真っ最中です。旧版は、没後2年を経過した1992年、『KATAN DOLL』および『KATAN DOLL fantasm』に収録された一部の代表作、未掲載の人形作品と人形以外の作品(オブジェ、絵画)を加え、さらに天野可淡が書き残した童話(次に構想していた写真絵本のための文章でした)や彼女を愛する作家たちのエッセイを収録し、最期の作品集として世に送り出されました。この本も前2册の作品集同様大変評判になりました。
 しかしあたらしい『KATAN DOLL RETROSPECTIVE』には旧版では実現できなかった内容が盛り込まれています。それは「天野可淡」という人物そのものです。
 編集部は、人形のみならずオブジェや絵画など、天野可淡の10数年に渡る精力的な創作活動の全体像を紹介するだけでなく、天野可淡というひとりの娘であり、母であり、女であり、アーティストであった人間そのものに光を当てることに傾注しました。それには資料面などご家族・近親者の方々の全面協力が不可欠でした。
 この本では、カタン人形の魅力を隅々まで読者に知っていただくだけではなく、愛機のオートバイとともに疾走したアーティストの激しい生きざまをもより深く感じ取っていただきたいと考えています。
 「KATAN PHOTO ALBUMの章」は、彼女の幼き日々、映画の子役またバレエによって表現者としての自己に目覚めていく少女期、「青春の苦しさ」に作家として生きる決意を持って対峙した思春期、同志吉田良氏と出会い人形作家・画家・造形作家そして母として生き、伝説となる「カタンドール」を生み出した80年代後半の豊穣な時代等を、豊富な写真と近親者の文章で紹介していきます。
 そして運命の11月1日の朝がやってくるのです。この日前後の可淡氏のことが、娘さんたちや当日打ち合わせを予定していた担当編集者たちの言葉を通じてヴィヴィッドに語られています。


 カタンドールを愛する人々が、その人形とともに作家自身を感じてもらえることを祈ってつくられるのがこの新版『KATAN DOLL RETROSPECTIVE』なのです。
http://www.editions-treville.net/?pid=5454210

é.t. : November 1, 2007 09:38 AM

 
エディシオン・トレヴィルについてリンクお問い合わせ