« September 2007 | メイン | December 2007 »

November 17, 2007

佳嶋氏デザインがフェスタに参加

佳嶋氏デザインがフェスタに参加します。

11月17-18日 【Design Festa】/東京
「ECHO+紫紺」西ホール B-102

é.t. : 12:00 AM

November 08, 2007

天野可淡はどこへ向かっていたのか?

 可淡人形を観た人の感想は大きく二つに別れる。不気味と感じて敬遠するか、その妖しい魅力の虜になるか。『KATAN DOLL RETROSPECTIVE』は過去2作以上に、天野可淡の創作の振幅を大きく反映した作品集成である。確かに可淡の人形には、愛玩する為だけのかわいらしい抱き人形の枠には収まらない、影の世界が色濃く横たわっている。彼女は童話に強い親和性をもって接していたが、それは原初の「グリム童話」のような無垢であると同時にグロテスクな想像力を去勢されていない世界としてであった。彼女にとってファンタジーはただ愛らしい夢の世界だけで構成されているものではない。それはもっと残酷で理性によって制御されない人間の欲望が渦巻く不条理な世界でもある。仮に「お人形」という言葉の響きに惑わされて可淡の人形に接すると、その異様な存在感、人形が放つ強い光ゆえに落ちる影の濃さに戸惑い圧倒されてしまうだろう。彼女の人形作品を観て気味が悪いと感じる人が多く存在するのは事実であろう。まさにその美醜の、合理と不合理の、あるいは人間と人形の境界を見据えて創作活動を続けていたのが可淡であるからだ。

 バリエーションとして、近親者の証言から、生前彼女が愛した音楽として、例えばヴァージニア・アストレイがあげられている。それはパストラルで安らぎと「生」の喜びにみち樹々を縫って陽光が振り注いでくるような静謐な森の音楽といえるのだが、他方ベーレン・ゲスリンの『悪魔狂死曲』のように、闇がどこまでも支配し光すらささないような「死」に統べられた暗黒の中世音楽をも彼女は愛していた。ここでは妖精のみならず悪魔と怪物たちが死の影を振りまきながら鬱蒼とした漆黒の森を厳かに行進するのである。

 ところで、天野可淡は果たして人形作家なのか、という問いをこの作品集は問いかけてくる。彼女が人形制作と並行して描き続けた童画、彼女がいくつも作り出した大きなオブジェ作品を目の当たりにする事で押井守氏は、彼女の創作領域の発展性を示唆している。それは晩年の可淡自身の発言のなかにも登場する。「今までの作品をより高い次元で包括出来るような仕事をしていきたい」と。

 『KATAN DOLL RETROSPECTIVE』によって読者は、『KATAN DOLL』『KATAN DOLL fantasm』に代表される人形世界のさらにその先に歩みだそうとしていた天野可淡を知るはずである。彼女が光と闇の両方の世界を行き来しながら人形を超越したさらに大きなファンタジーを羽ばたかせていたことを。

é.t. : 03:33 AM

November 01, 2007

11月1日、天野可淡の命日に寄せて。

 今から17年前の1990年の11月1日午前11時10分。不世出のドールアーティスト天野可淡がバイク事故によってこの世を去りました。享年37歳。
 彼女が遺した人形たちは写真集としてその後も永きに渡り人々を魅了し続けています。さらにこう表現することが許されるなら、彼女の人形は人々の心を癒し、人生に傷つき苦しみを感じていた人々にもその不思議な魅力をたたえる人形の力によって「生」への感謝と勇気を与え続けていると。
 編集部は今『KATAN DOLL RETROSPECTIVE』の復刻版制作の真っ最中です。旧版は、没後2年を経過した1992年、『KATAN DOLL』および『KATAN DOLL fantasm』に収録された一部の代表作、未掲載の人形作品と人形以外の作品(オブジェ、絵画)を加え、さらに天野可淡が書き残した童話(次に構想していた写真絵本のための文章でした)や彼女を愛する作家たちのエッセイを収録し、最期の作品集として世に送り出されました。この本も前2册の作品集同様大変評判になりました。
 しかしあたらしい『KATAN DOLL RETROSPECTIVE』には旧版では実現できなかった内容が盛り込まれています。それは「天野可淡」という人物そのものです。
 編集部は、人形のみならずオブジェや絵画など、天野可淡の10数年に渡る精力的な創作活動の全体像を紹介するだけでなく、天野可淡というひとりの娘であり、母であり、女であり、アーティストであった人間そのものに光を当てることに傾注しました。それには資料面などご家族・近親者の方々の全面協力が不可欠でした。
 この本では、カタン人形の魅力を隅々まで読者に知っていただくだけではなく、愛機のオートバイとともに疾走したアーティストの激しい生きざまをもより深く感じ取っていただきたいと考えています。
 「KATAN PHOTO ALBUMの章」は、彼女の幼き日々、映画の子役またバレエによって表現者としての自己に目覚めていく少女期、「青春の苦しさ」に作家として生きる決意を持って対峙した思春期、同志吉田良氏と出会い人形作家・画家・造形作家そして母として生き、伝説となる「カタンドール」を生み出した80年代後半の豊穣な時代等を、豊富な写真と近親者の文章で紹介していきます。
 そして運命の11月1日の朝がやってくるのです。この日前後の可淡氏のことが、娘さんたちや当日打ち合わせを予定していた担当編集者たちの言葉を通じてヴィヴィッドに語られています。


 カタンドールを愛する人々が、その人形とともに作家自身を感じてもらえることを祈ってつくられるのがこの新版『KATAN DOLL RETROSPECTIVE』なのです。
http://www.editions-treville.net/?pid=5454210

é.t. : 09:38 AM

エディシオン・トレヴィルについてリンクお問い合わせ