December 04, 2007

『ピエール・モリニエ画集』

澁澤龍彦が、かつて傍系シュルレアリストとして位置づけたフランスの画家、写真家ピエール・モリニエは、アンドレ・ブルトンによって光をあてられた1950年代後半から拳銃自殺を遂げる1976年まで、世界的にもごく一部の好事家たちの関心しかひきませんでした。ボルドーの小さなアトリエに引きこもり、エロティシズムとナルシシズムを剥き出しにしたそのあまりに破天荒で非常識な個性と作品ゆえ、一度たりとも大衆的な認知と人気を手にしたことのないアーティストでした。それにもかかわらず、モリニエに関する研究や著作、カタログ等が各国から今日にいたるまで頻繁に発表され続けているという事実は、芸術活動の根源的な衝動に真に向かいあい、性の多形倒錯的なパフォーマンスの先駆的実践者としてのモリニエ評価がようやく定着してきたからに他なりません(近年フェミニズム研究のアプローチもあるようです)。モリニエは絵画制作の体力が衰えた晩年の十数年を写真家として活動。この時精力的に産み出したフォトモンタージュ作品が没後『シャーマンとその創造物たち』(1995)として刊行され、世界中でピエール・モリニエという特異なアーティストの存在が知られるようになりました。日本では、澁澤責任編集による「血と薔薇 第3号」(1969)での特集や生田耕作によるアンソロジー冊子による紹介とあいまって早い時期からモリニエに対する関心が高まり、作品コレクターもあらわれ、小展覧会がたびたび開催され、またその芸術的影響を受け止めた国内作家たち—四谷シモン、金子國義、森村泰昌らを挙げることができるのではないでしょうか—も多数存在しています。

流通した作品が多く比較的制作しやすいフォトモンタージュにくらべ、モリニエの人生の大半を費やした画業は、ブルトンの序文を冠したフランスのジャン-ジャック・ポウ゛ェール版(絶版)を除くと、本書の底本となっているスイスのベルナール・レチュ版(絶版)くらいしか見当らず、その意味でも本書は世界でも大変貴重な作品集となっています。今回、日本語版復刻にあたり、装丁を一新、ページ数も増やしました。巌谷國士氏の解説とともにあらたに関連人物紹介やフォトモンタージュ作品を参考資料として付すことによって、ピエール・モリニエの入門書としても役立つよう改訂しています。

↓ご購入は、こちら から。
http://www.editions-treville.net/?pid=5441602

é.t. : 08:15 AM

November 17, 2007

佳嶋氏デザインがフェスタに参加

佳嶋氏デザインがフェスタに参加します。

11月17-18日 【Design Festa】/東京
「ECHO+紫紺」西ホール B-102

é.t. : 12:00 AM

November 08, 2007

天野可淡はどこへ向かっていたのか?

 可淡人形を観た人の感想は大きく二つに別れる。不気味と感じて敬遠するか、その妖しい魅力の虜になるか。『KATAN DOLL RETROSPECTIVE』は過去2作以上に、天野可淡の創作の振幅を大きく反映した作品集成である。確かに可淡の人形には、愛玩する為だけのかわいらしい抱き人形の枠には収まらない、影の世界が色濃く横たわっている。彼女は童話に強い親和性をもって接していたが、それは原初の「グリム童話」のような無垢であると同時にグロテスクな想像力を去勢されていない世界としてであった。彼女にとってファンタジーはただ愛らしい夢の世界だけで構成されているものではない。それはもっと残酷で理性によって制御されない人間の欲望が渦巻く不条理な世界でもある。仮に「お人形」という言葉の響きに惑わされて可淡の人形に接すると、その異様な存在感、人形が放つ強い光ゆえに落ちる影の濃さに戸惑い圧倒されてしまうだろう。彼女の人形作品を観て気味が悪いと感じる人が多く存在するのは事実であろう。まさにその美醜の、合理と不合理の、あるいは人間と人形の境界を見据えて創作活動を続けていたのが可淡であるからだ。

 バリエーションとして、近親者の証言から、生前彼女が愛した音楽として、例えばヴァージニア・アストレイがあげられている。それはパストラルで安らぎと「生」の喜びにみち樹々を縫って陽光が振り注いでくるような静謐な森の音楽といえるのだが、他方ベーレン・ゲスリンの『悪魔狂死曲』のように、闇がどこまでも支配し光すらささないような「死」に統べられた暗黒の中世音楽をも彼女は愛していた。ここでは妖精のみならず悪魔と怪物たちが死の影を振りまきながら鬱蒼とした漆黒の森を厳かに行進するのである。

 ところで、天野可淡は果たして人形作家なのか、という問いをこの作品集は問いかけてくる。彼女が人形制作と並行して描き続けた童画、彼女がいくつも作り出した大きなオブジェ作品を目の当たりにする事で押井守氏は、彼女の創作領域の発展性を示唆している。それは晩年の可淡自身の発言のなかにも登場する。「今までの作品をより高い次元で包括出来るような仕事をしていきたい」と。

 『KATAN DOLL RETROSPECTIVE』によって読者は、『KATAN DOLL』『KATAN DOLL fantasm』に代表される人形世界のさらにその先に歩みだそうとしていた天野可淡を知るはずである。彼女が光と闇の両方の世界を行き来しながら人形を超越したさらに大きなファンタジーを羽ばたかせていたことを。

é.t. : 03:33 AM

November 01, 2007

11月1日、天野可淡の命日に寄せて。

 今から17年前の1990年の11月1日午前11時10分。不世出のドールアーティスト天野可淡がバイク事故によってこの世を去りました。享年37歳。
 彼女が遺した人形たちは写真集としてその後も永きに渡り人々を魅了し続けています。さらにこう表現することが許されるなら、彼女の人形は人々の心を癒し、人生に傷つき苦しみを感じていた人々にもその不思議な魅力をたたえる人形の力によって「生」への感謝と勇気を与え続けていると。
 編集部は今『KATAN DOLL RETROSPECTIVE』の復刻版制作の真っ最中です。旧版は、没後2年を経過した1992年、『KATAN DOLL』および『KATAN DOLL fantasm』に収録された一部の代表作、未掲載の人形作品と人形以外の作品(オブジェ、絵画)を加え、さらに天野可淡が書き残した童話(次に構想していた写真絵本のための文章でした)や彼女を愛する作家たちのエッセイを収録し、最期の作品集として世に送り出されました。この本も前2册の作品集同様大変評判になりました。
 しかしあたらしい『KATAN DOLL RETROSPECTIVE』には旧版では実現できなかった内容が盛り込まれています。それは「天野可淡」という人物そのものです。
 編集部は、人形のみならずオブジェや絵画など、天野可淡の10数年に渡る精力的な創作活動の全体像を紹介するだけでなく、天野可淡というひとりの娘であり、母であり、女であり、アーティストであった人間そのものに光を当てることに傾注しました。それには資料面などご家族・近親者の方々の全面協力が不可欠でした。
 この本では、カタン人形の魅力を隅々まで読者に知っていただくだけではなく、愛機のオートバイとともに疾走したアーティストの激しい生きざまをもより深く感じ取っていただきたいと考えています。
 「KATAN PHOTO ALBUMの章」は、彼女の幼き日々、映画の子役またバレエによって表現者としての自己に目覚めていく少女期、「青春の苦しさ」に作家として生きる決意を持って対峙した思春期、同志吉田良氏と出会い人形作家・画家・造形作家そして母として生き、伝説となる「カタンドール」を生み出した80年代後半の豊穣な時代等を、豊富な写真と近親者の文章で紹介していきます。
 そして運命の11月1日の朝がやってくるのです。この日前後の可淡氏のことが、娘さんたちや当日打ち合わせを予定していた担当編集者たちの言葉を通じてヴィヴィッドに語られています。


 カタンドールを愛する人々が、その人形とともに作家自身を感じてもらえることを祈ってつくられるのがこの新版『KATAN DOLL RETROSPECTIVE』なのです。
http://www.editions-treville.net/?pid=5454210

é.t. : 09:38 AM

September 01, 2007

追悼坪島孝監督!

東宝クレージー映画を支えた巨人がまたひとり他界されました。3月の植木さんの訃報に続き8月12日坪島孝監督がお亡くなりになりました。享年79歳。つい先頃の「植木さんを送る会」ではお元気そうだったのに。かつて『ジ・オフィシャル・クレージーキャッツ』のためのインタヴュー取材で坪島監督のオフィスを訪ねたことがあります。気さくに当時のエピソードをたっぷり語っていただきました。坪島監督といえばあのラスベガスの大通りを車両通行止めにして敢行した『クレージー黄金作戦』の圧倒的迫力のダンスシーンが思い出されます。寂しいです。心からお悔やみ申し上げます。(編集部)

é.t. : 08:14 PM

August 03, 2007

トレヴァー・ブラウン最新作品展"BABIES"のご案内

BABIESをモチーフにした、かわいいサイズの最新ペインティングを多数展示。
これらの作品を収めた"マニアブック"も限定出版。

"BABIES"EXHIBITION
8月11日(土)~27日(金)
於タコシェ

詳しくはhttp://tacoche.com/
まで。



◎画像クリックで拡大します。

é.t. : 03:29 AM

July 11, 2007

野波浩写真集『Aphrodisiac催淫』『Euphoric陶酔』限定特装版のご紹介

『Aphrodisiac催淫』(6月刊)『Euphoric陶酔』(7月下旬刊予定)の普及版刊行に続き、待望の特別仕様の限定版(500セット)が登場します。

野波浩写真のファンならば、作品中のミューズたちがまとうアモルファスなテキスタイルやラグのドレスにしばしば幻惑されるはずです。特装版のテーマはオーガニックかつシックな「ラグ感」です。まず今回のデュプティックを構成する『Aphrodisiac催淫』『Euphoric陶酔』の特装版の表紙クロスには、2冊共通の綿素材をあつらえました。表紙には清潔感のある素材そのもののテクスチャーを楽しんでいただけるようにいっさいデザインを加えていません。背には生成り地に深々とロゴを刻印。普及版ケースの官能的なアピアランスとは一転、優雅な風貌を与えました。本書には普及版にはない半透明の別丁扉をあしらいここに直筆サインと篆刻の押印が記されます。見返しも2冊共通の里紙銀を使い特別なコーディネイトになっています。そしてこれら2冊を複数の綿生地で縫い合わせたラグ感満点のオリジナル・トートバッグに収めました。バッグはひとつひとつ手作りのため外観がすべて少しずつ異なります。また使用している生地も微妙に異なります。しかしながら普段使いに耐える強度を備えています。エディシオン・トレヴィルが過去に制作してきた数々の特装版としても非常にユニークな存在となっています。(制作部)

http://www.editions-treville.net


普及版『催淫』『陶酔』のケース(画像クリックで拡大します)

é.t. : 11:24 AM

May 27, 2007

ポーリーヌ・レアージュ生誕100年

グィド・クレパクス画/ポーリーヌ・レアージュ原作/巌谷國士監訳『O嬢の物語I』『O嬢の物語II』

 今年は『O嬢の物語』(54年刊)を書いたポーリーヌ・レアージュが誕生してちょうど100年にあたります。この生誕100年を日本で祝賀しているのはおそらく『O嬢の物語』をこよなく愛する読者の方々とエディシオン・トレヴィル編集部だけかも知れません。一般には評判の良くなかったジュスト・ジャカン監督の映画版『O嬢の物語』も再度映画化に挑戦したエリック・ローシャのブラジル版『O嬢の物語』も含め、汎O嬢萌え状態にある我々としては、是非ともクレパクス版『O嬢』をレアージュ誕生100年祭の今年なんとか復刊したかったわけなのです。
 周知のとおりポーリーヌ・レアージュは覆面作家で澁澤龍彦氏の邦訳版あとがきでもその実作者探しに多くの原稿が割かれていました。結局その正体が著名な英文学者・英文学翻訳家でもあったドミニック・オリーであったこと、さらにそれも筆名で、本名はアンヌ・デクロというバイセクシュアルの美貌の女性であったことなどが分かっています。そして『O嬢』は年長の愛人ジャン・ポーランに書き綴った恋文でありレアージュ唯一の小説でもあったのでした。
 原作はもとより澁澤龍彦版『O嬢の物語』は今もロングセラーを続けているエロティック文学のマスターピースですが、その原作を忠実にコミック化したイタリアのバンデシネ作家グィド・クレパクスの描いた『O嬢の物語I & II』(75年刊)も世界中で長く読みつがれている名作なのです。
 マルキ・ド・サドに傾倒しシュールでエロティックな傑作コミックを次々産み出していたクレパクスの大ファンでもあったロラン・バルト、ロブ-グリエらが初版本に寄稿しています。これらのエッセイも訳出、本書には収録されています。
 クレパクスは1960年代に彼が作り出したスーパーヒロイン「ウ゛ァレンティーナ」の作者として日本でも知られていますが、彼のように教養もあり洗練された大人のエロティスムを描ける作家が活躍したイタリア、ヨーロッパ、そしてそんな世界とシンクロしていた60年代末、70年代初頭の日本の文化状況が、今はとても官能的でいとおしく感じられます(それに引き比べ今の日本は、なんてひからびてエロティスムの欠片もない文化状況なのでしょうか!)。ウ゛ァレンティーナへの、そしてクレパクが産み出すヒロインたちへの偏愛を告白すべく編集子は1999年ミラノのスタジオに氏を訪ねました。その彼も2003年、享年70歳で帰らぬ人となってしまいました。(K)

é.t. : 11:56 PM

March 30, 2007

訃報

昭和「無責任ソウル」の偉大なる父、植木等さん逝く!! 享年80歳

『ジ・オフィシャル・クレージーキャッツ・グラフィティ』(1993年、トレヴィル刊、絶版)

トレヴィル編集部*は、1993年、5年の歳月を費やし総力をあげて昭和ソウルの体現者クレージーキャッツにささげる一冊の写真集を世に送り出しました。『ジ・オフィシャル・クレージーキャッツ・グラフィティ』です。写真図版約500点、400ページにおよぶ本書は、今もクレージー神話を最も詳細にとどめたバイブルとして多くの人々に愛されています。この度の植木等さんの訃報にせっし、あらためて生きる勇気と希望を与えてくれた偉大なる昭和「無責任ソウル」の父とクレージーキャッツの皆さんに感謝するとともに、ご冥福をお祈りしたいと思います。       
編集部

*トレヴィルはエディシオン・トレヴィルの前身にあたります。

é.t. : 06:13 PM

February 14, 2007

丸尾末広展開催

京都のトランス・ポップ・ギャラリー
丸尾末広展開催
2月15日(木)~3月11(日)
期間中は月、火定休
〒606-8203 京都市左京区田中関田町22-75
Tel.075-723-1780

詳細は以下のアドレスにてお問い合わせください。
trancepopjp@yahoo.co.jp
trancepopgallery@xvb.biglobe.ne.jp
http://www.trancepop.jp/index.html

é.t. : 11:47 PM

January 19, 2007

1月16日トレヴァー・ブラウン氏が来社。

限定版500部にサインとナンバーを入れていただきました。しかしながら、すでに予約注文分で入手可能な残りはわずかです。展覧会会場(ルデコ)でも購入できますが、期間中品切れする可能性もあります。なるべく当社ネットで早めの御注文をおすすめします。

http://www.editions-treville.net/?pid=2683899

ルデコ(東京)での展覧会はいよいよ1月23日から。
http://www.editions-treville.com/artlab/blog/archives/2006/12/post_27.html

é.t. : 02:43 PM

January 10, 2007

トレヴァー・ブラウンの最新画集『ラバー・ドール

トレヴァー・ブラウンの最新画集『ラバー・ドール』の限定版用マテリアルがそろいました。写真1はロンドンから届いたピアスです。ラバー・ジャケットもエンボスが深々と刻まれ、とってもいい感じ。写真2はチェーン&ピアスがついたところです。『メディカル・ファン』のフェイク血液入り赤十字の限定版を作った時もあっという間になくなってしまいましたが、今回の限定500部も、気がつけば残数あとわずかです。海外からのまとまった受注もあり、会場売り分が確保できるか心配です。普及版もサイン本をトレヴァー氏にお願いしますので、万が一の場合はこちらをお求め下さい。内容は限定版と同一なのでトレヴァー作品を存分に堪能できます。(編集部)

é.t. : 10:08 AM

December 27, 2006

トレヴァ−・ブラウン作品展&作品集『ラバー・ド−ル』の御案内

展覧会情報

--- 東京会場 ---
● 会期:2007年1月23日(火)〜1月28日(日)12:00〜19:00
(会期中無休/最終日は〜17:00まで)
● 会場:ルデコ(東京都渋谷区渋谷3-16-3)
● 電話:03‐5485‐5188
● 入場料:無料
●会期中はトレヴァー・ブラウン氏が会場に常駐する予定です。お気軽にお越し下さい。

--- 大阪会場 ---
● 会期:2007年2月9日(金)〜3月4日(日)13:00〜22:00(会期中無休)
● 会場:サブタレニアンズ(大阪市中央区瓦屋町 2-14-9)
● 電話:06-6762-7730
●「オープニングレセプション」2月9日(金)18時〜
 トレヴァー・ブラウン氏をお迎えして、
 オープニングレセプションを予定しています。
● 詳細はサブタレニアンズへ、電話:06-6762-7730
● 入場料:無料


トレヴァ−・ブラウン最新作品集『ラバー・ド−ル』予約開始しました。
普及版の他にスペシャル・ラバー・エディション*を制作しています。
最新作品集『Rubber doll』発売はいずれも2007年1月中旬です。

2007年1月に東京・大阪会場で開かれる
展覧会を記念した限定版500部
『Rubber doll〈スペシャル・ラバー・エディション〉』の仕様:
500部限定/著者サイン入り/エディションナンバー入り/
フェイク・ラバー・ジャケット掛け/チェーン&ボディ・ピアス付き。

尚、限定版500部
「Rubber doll〈スペシャル・ラバー・エディション〉」は、
一般書店での購入は出来ません。詳しくは、
http://www.editions-treville.net/?pid=2683899
まで。

é.t. : 11:05 PM

November 30, 2006

編集部ブログ フィービー作品集

スモーキーなグルーヴ感とネオジャポネスクを打ち出した大胆なアートスタイル。クール・セクシーそしてファッショナブルな現代女性像を確立しイラスト界に新しい風を巻き起こすフィービーのグラフィックワーク。エーテー・アンソリットから登場。

the art of feebee
The Cosmic Oiran, The Future Kunoichi & Lounge Samurai
フィービー作品集
コズミック・オイラン、フューチャー・クノイチ&ラウンジ・サムライ
12月下旬刊。定価3000円+税。オンラインショップにて絶賛予約受付中。


外ジャケ(クラフト紙に印刷です)
内ジャケ(赤い金の月が抜けているジャケットです)

é.t. : 03:32 PM

November 18, 2006

電子パーツのメランコリー

宮島浩一がつくりだしたNANONANOの世界

ハイテク社会を支える現代の陰の主役は、指先ほどの無数の電子パーツたちだ。ロボット・アーティスト宮島浩一はそのままでは無機的で匿名的な規格品に過ぎない電子パーツに、ユーモラスでちょっぴりノスタルジックでヒューマンライクなロボットの姿を与え、彼らをエレクトロニクス時代の都市生活者に仕立て上げた。NANONANOと名付けられた携帯ストラップ型のロボットたちは、いろいろなモデルや職業で構成され、それぞれのアーバンライフを送っている。バスドライバーもいれば、バイカーもいる。ミュージシャンもいれば、工作機械のオペレーターもいる。宮島は電子パーツに加えLEDや電気製品の廃材、アクセサリーパーツを駆使し観覧車やメリーゴーラウンド、F-1マシン、チョッパー、ロケットなどを想像力豊かに組み上げ、NANONANOの世界をこの数年間で大きく発展させた。六本木ヒルズのミュージアム・ショップを拠点に販売されてきたNANONANOはこの地を訪れる世界中の観光客の支持を受けて現在もロングセラーを続けている。

仕様)

電子パーツ系キャラクターNANONANOの
世界を集大成した初のオフィシャルブックを発売。

iconics
Kouichi Miyajima
NANONANO
How to Keep Your Life Calm in the Highly Advanced Techno Society?

アイコニクス
宮島浩一
NANONANO
高度に発展したテクノ社会でいかに平穏な生活を維持するか?

150x130mm、並製、本文108頁、小口側2点組ねじ留め、PPケース入り
普及版(NANONANOなし):定価2300円+税
500部限定NANONANO付き(パープルとブルー有り)特別版:定価5000円+税
まめNANO本:定価300円(税込)

発行:エディシオン・トレヴィル
問い合わせ:info@editions-treville.com
http://www.editions-treville.com
http://www.editions-treville.net

é.t. : 03:12 AM

October 31, 2006

いにしえのアーティストたちの美と想像力の遺産を紹介。

新レーベル"エーテー・クラシックス"第一弾
人気挿絵画家
『アーサー・ラッカム』作品集
Arthur Rackham

新レーベル第一弾として刊行された、英国の挿絵本黄金期に活躍した挿絵画家アーサー・ラッカムの作品集。1996年に旧トレヴィルより刊行されてまもなく絶版となって以来、復刻の要望が絶える事のなかった一冊です。本書では、ラッカムが手掛けた数多くの挿絵本のなかから、当時爆発的な人気を博した『ケンジントン・ガーデンのピーター・パン』、ジョン・テニエル版と現在人気を二分する『不思議の国のアリス』、シルエットを使った実験的な『シンデレラ』、ヴァーグナーの大作をギフトブックにした『ニーベルンゲンの指輪』、病床で描き上げ遺作となった『楽しい川辺』などを紹介しています。光の中で樹々が揺れ、闇の中で炎が燃える。愛らしく可憐な妖精たちが輪舞し、小さな動物たちの話し声が聴こえる。ラッカムによって詩情豊かに描かれた挿絵が、私たちをファンタジックな物語世界へと誘います。古き良き時代の最後の挿絵職人ラッカム。その人柄と生涯については、大瀧啓裕氏による解説にて詳しく紹介されていますので、どうぞご一読ください。


エーテー・クラシックス第二弾 
妖精画集の決定版
『ミッドサマー・イヴ 夏の夜の妖精たち』
Midsummer Eve

シリーズ第二弾は、ヴィクトリア朝時代を中心に描かれた多様な妖精画のコレクション、『ミッドサマー・イヴ 夏の夜の妖精たち』です。タイトルにあるミッドサマー・イヴとは、夏至祭前夜のこと。異境に棲む者たちと人間とが森のなかで混じり合う日とされ、シェイクスピアの『夏の夜の夢』も、この日を舞台に描かれています。本書では、『夏の夜の夢』をはじめ、ケルト語神話や中世ロマンス、イングランドやスコットランドの民間伝承、アンデルセン童話やグリム童話などの物語に登場する妖精たちと、妖精たちの棲む不可視の世界に魅入られた画家たちについて紹介しています。ラッカム(『アーサー・ラッカム』画集未収録作品多数含)、デュラック、ペイトン、ダッド、ドイル兄弟、グリムショー、フィッツジェラルド他、貴重な妖精画コレクションと充実した妖精論を通して、リリカルでミステリアスな妖精世界を覗いてみてください。(復刻にあたり、収録作品のいくつかをより美しい版に差し替え、初版時の解説に辺見葉子氏が加筆修正されています。)


エーテー・クラシックス第三弾 
幻の異色画集、復刻決定!
『水の女 溟き水より』 From the Deep Waters

トレヴィル出版時、版を重ねるごとに熱狂的なファンを獲得した幻の画集『水の女』をクラシックス・シリーズ第三弾として復刻致します。アーサー・ヒューズ、ジョン・エヴァレット・ミレーの『オフィーリア』、ウォーターハウスの『シャロットの女』や『ヒュラスと妖精たち』、クリムトの『海蛇I』、レイトンの『漁師とセイレーン』、バーン=ジョウンズの『深海』、カバネル、ブグローの『ヴィーナスの誕生』など人気の名画44点を、テート・ギャラリー、オルセー美術館、ルーヴル美術館、フォッグ美術館、マンチェスター市立美術館、リヴァプール国立美術館など所蔵美術館提供の美しいイメージで紹介した贅沢な画集です。ラファエル前派やロマン派など19世紀の画家たちが描いた、水と女たちの美しくも残酷な関係。愛と死の誘惑から成る官能と退廃の美をご堪能いただけます。

é.t. : 02:00 PM

July 08, 2006

『フランケンシュタインの花嫁』は、異色の人形作家三浦悦子と写真家谷敦志の苛烈なセッションによって産み出されたまぎれもなく人形作品集の傑作。

痛々しいほどに被虐的な外観を纏った三浦悦子の人形たちは、徹頭徹尾不可侵の処女性をスティグマータとしてその倒錯的な身体に刻印された聖者だ。また写真家谷は三浦人形に一貫する超越的なまでの被虐性と聖性を見抜き、三浦人形の本質をさらに際立たせるべくその欲望に真正面から応え、容赦ないカメラの視線を浴びせかける。彼が本書でアプローチした窃視症的な撮影スタイルには奇跡的にも犯罪者と審美家の眼が同居しており、この人形作品集の密室世界で展開されるエロスとタナトスのセッションを共犯者たる読者に最後の最後まで息を押し殺させるほどの緊張感を与えながら綴っていく。本書は、かつてハンス・ベルメールが自作の球体関節人形と写真によって試みた倒錯的な少女幻想を、挑発的に継承し、ピグマリオン美学における究極のエロティスムとして再び視覚化し得た、苛烈にして荘厳な「愛と死」のブライダルなのである。尚、本書には限定版付属のロビーカードとして本編未収録の14葉の写真からなる傑作掌編(『人形のはらわた』)が別途作成されている。http://www.editions-treville.net/?mode=cate&cbid=48105&csid=0
(エーテー/パン・エキゾチカ編集部)

é.t. : 01:22 AM

July 04, 2006

世界中を熱狂させたあの『水野純子のヘル・ベイビーズ』が
VERSION UPして帰ってきた!


すでにご承知のように、国内発売されていた水野純子の漫画のいくつかは、英語版、フランス語版、ポルトガル語版などに翻訳され、アメリカ、カナダ、イギリス、フランス、イタリア、ブラジル、スウェーデン、ドイツでもカルト的人気を獲得しています。各国で開催されるコミック・コンベンションの常連招待作家として水野氏は忙しく海外を飛び回る生活が続いています。またそのキャラクター人気も凄まじくTシャツやステイショナリーなど数多くのグッズを制作。海外でのグループ・ショウにも参加し、漫画家の枠をこえたマルチ・グラフィック・アーチストとして活躍中です。突出した造本とバイリンガルで制作された小社の『ヘル・べイビーズ』(2001)もカルト作品集として欧米で高い人気を誇り、これまで数えきれないほどのバックオーダーに応えて来ました。しかしながら、ファンには大変申し訳ないことに、ゴージャスすぎるジャケットのコストが足かせとなり、ここしばらく重版もままならず品切れ状態が続いていたのでした。しかしながら、世界中の多くのファンの熱いラヴコールと、キュートなビニール・ジャケットをやめないで、というに叫びに励まされ、「未発表のヘル・ベイビーズ・シリーズ」(16頁22図版)をあらたに追加、ゴージャスにもラメを全面にあしらったあたらしいジャケット・カラーに装丁まわりを刷新、この夏アップグレイド版 (コストをさらに掛けてしまいました)として再登場させることにあいなりました。旧版のかわいらしいネイキッド・カラーのジャケットから一変、今度はノクターナルなムード漂うアダルト・セクシーな風貌を纏っています。水野純子作家デビュー10周年にあたる今年、秋の刊行を目標に、10年間のセクシーでバーレスクな魅力溢れるアートワークを集大成した作品集(JUNKO MIZUNO; A TEN YEAR COLLECTION/THE BURLESQUE SHOW仮題)を準備中。こちらもご期待下さい。(エーテー/パン・エキゾチカ編集部)

é.t. : 03:02 PM

October 05, 2005

2種類の野波浩写真集『カオス

いずれもノーブルでありながら、
クールなスタンダード版と艶やかなスペシャル限定版

かのマリリン・マンソンが来日中にわざわざ大阪の書店で買い求めたという野波写真の特色は、ご承知のようにキマイラとして姿を変えられた美しいモデルとその周りに幾重にも重ねられた渾沌としたバックグラウンドです。経年変化の果てなのかあるいは化学反応による腐食なのか、とらえどころのない質感をたたえる背景にかろうじて人間の姿をとどめた有機生命体の亜種が溶け込んでいる妖美の世界。当初、本体表紙にもそのアンソリットな雰囲気を反映させたいと考え、あえて気味の悪い質感を持つクロコダイル柄の紙を最初に選定しました。ところがこれが大変高価な用紙であるのと特殊紙のため在庫が限られやむなく断念。次の候補のやはりクロコ(ダイル)と呼ばれる細かなウロコ柄がびっしりとついた用紙に変更(実はこれも高い紙だった)することにしました。クロコという名称の紙ですが、どちらかというとリザード(蜥蜴)っぽいです。ぶつぶつの質感がちょっぴり気味が悪くて素敵です。ダストジャケット(カバーのこと)はバストショットの女性モデルの写真を葡萄色がかったダークなパール色のフレームが囲むというノーブルなデザイン。題字の『CHAOS』は、今回、野波氏におねだりし直筆を頂くことにしました。シックなマット仕上げのジャケットに、直筆のCHAOSの題字とHIROSHI NONAMIの著者名を、光沢のある黒のUVインクで浮き立たせています(またも制作泣かせの高コストな仕様!!でもカッコいいです)。旧版も黄金に輝く豪華なデザインでしたが、今回のエディシオン・トレヴィル版は写真図版も増え、ページも増え、造本資材も前作以上に凝り、ダークでファンタジックな野波ワールドが一層輝きを増すよう設計されています。少々値段ははりますが大判サイズでかつハードカバーという(その他にも金の箔押し背文字、メタリックな質感の別丁扉と贅沢はとどまるところを知らず)はるかにお値段以上の価値がある高級感溢れる写真集に仕上がりました。

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どうしてもあきらめきれなかったのが、最初に選定したクロコダイル柄の用紙です。かろうじてひと箱だけ残っていた在庫で、400部だけ限定版を制作することにしました。野波氏と話し合い、じゃあということで、ダストジャケット(カバーのこと)もダークな色調のスタンダード版とは対照的に、限定版は気品のある色にしようということに決まり。カバー表と背にかけて柔らかいパールピンク色を敷き詰めるということになりました。この限定版には高級化粧品のパッケージを思わせるような艶やかさが漂います。本体のワイルドなクロダイル柄との対比も際立ちます。あたかもロココ趣味のマダムの閨房といった風情のスペシャル限定版になりました。スタンダード版もクールでカッコいいすが、これもちょっぴりセクシーですごくいい。カバーをはがすとワイルド。ハッキリ言って両方とも絶対欲しい! 何とお値段も一緒です(本文図版はもちろん全く共通の高品位印刷)!
ただし、このスペシャル限定版はエディシオン・トレヴィル・オンラインショップか写真展開会場(art space K)、著者サイン会を予定している書店など一部の売場のみの取り扱いとなります。売り切れ御免です。お早めにお買い求め下さい。(制作室)

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スペシャル限定版取扱店
◆エディシオン・トレヴィル・オンラインショップ
◆紀伊国屋書店新宿南店
◆大阪心斎橋アセンス
◆art space K

é.t. : 12:21 AM | comment (1)

September 30, 2005

バロック・アナトミア』の写真術

佐藤明写真集『バロック・アナトミア』には美しく荘厳な佇まいの鑞人形たちが多数収録されている。しかしその撮影条件は決してめぐまれてはいなかった。当時、博物館側からの要請で様々な制約を受けながら短時間のうちに撮影を完了しなければならなかったのだ。ガラスケースを開けることはもちろん、ストロボ、タングステンランプ、また三脚を使用することも禁じられていた。にもかかわらず数百年の時を経た鑞細工の人形たちが、みごとなコンポジションとライティングで活き活きと捉えられている。残念ながら2002年に他界された佐藤氏にその撮影の詳細をあらためて伺うことはかなわなかったが、身近な方たちからお話を伺ってみると、やはり長年の経験に裏打ちされた卓越した写真術を知ることができた。

 まず、旅先での撮影が多かった佐藤氏は機動性を重視し機材も最小限にとどめていたという。ボディとして比較的軽量のニコンF100。単焦点レンズを何本も携行することはせず、使用頻度の高い28〜35ミリの画角をカバーする広角系のズームを愛用されていたようだ。鑞人形のクローズアップもこの広角系ズームが多用されていたと思われる。

 ラ・スペコラでは高熱を発するハロゲンランプは使用禁止。ストロボも不可。館内のアベイラブルライトはといえば、スポット光と蛍光灯のみだ。紫外線混じりのかなり汚れた照明環境だ。そこでまず蛍光灯だけは落としてもらい、主光源としてスポット光をそのまま、あるいは反射板で利用。また持参の懐中電灯をミニ三脚に固定し、これを補助光また時にはスヌーズとして使い鑞人形の肉体の照り・キャッチライトを作り出していた。蛍光灯を消すことで館全体は光量不足になるが、スポットや懐中電灯が当たった箇所はステージのように浮かび上がりかえってその劇場性を高めている。佐藤氏は光りの悪条件を瞬時に見極めながら効果的な演出方法を考え付いたのだ。

 全体的に館内は暗く、絞りを全開にしてもかなりスローシャッターになることが予想される。そこでコダクロームのタングステン用ASA160または320の高感度フィルムを使用。レンズの明るさをかせぐためにもフィルター類は使わず、館内での使用を許可されていた1脚はかろうじて使うとしてもほとんど手持ちに近い態勢でカメラを構えなければならなかった。直感的に下された構図の選択もすばらしいのだが、厳しい手ぶれとの戦いが想像される。ポジを拝見するにつけそのフォーカス精度は驚嘆すべきだ。対照的に背景のボケや暗さが強調され写真に生々しい立体感を与えている。

 死の匂いを湛えながらエロティックですらある鑞人形たち。臓物にはびっしりと無数の神経繊維がからみつき、血管が内臓を飾り立てるモールのように垂れ下がっている。赤々とした開腹部は、まるでグロテスクなまでに装飾されたメキシコの土着キリスト教の祭壇のようだ。

 これまでラ・スペコラの解剖鑞人形は純医学写真集のようなかたちではヨーロッパで出版され紹介されてきた。しかしながら佐藤明氏の『バロック・アナトミア』によって、表向き医学資料用に作られたとされる鑞人形たちが、紛れもなく荘厳かつアンソリットな観賞用芸術でもあったことが暴かれてしまったのではないだろうか。(K)

é.t. : 11:33 PM | comment (0)

September 16, 2005

佐藤明写真集『バロック・アナトミア

 ヨーロッパの古都を巡る佐藤明氏の三冊の写真集『ウィーン幻想』(平凡社、1989)『フィレンツェ』(講談社、1997)『プラハ』(新潮社、2003)は、うっすらと憂いを孕んだ旧世界の旅情の中に文明の爛熟と黄昏をもの静かなタッチで綴った美しく典雅な写真集だ。それにくらべ『バロック・アナトミア』は氏にとってグロッタの世界だけを見つめた異色作のように感じられる。しかしここラ・スペコラにはまちがいなく佐藤氏の不断の写真美学と共鳴しあう被写体が横たわっていたのである。写真集『フィレンツェ』のあとがきの中で、「なぜフィレンツェに魅せられたか」を氏自ら語っている箇所がある。少々長くなるが引用してみよう。「フィレンツェの場合は、ふたつの不思議な時を越えた静寂な世界がこの土地に足を運ばせることになる。ひとつはある博物館に入った時であり、もうひとつはある貴族の館に足を踏み入れた時だった。フィレンツェ通いが本格化したのは、1990年の暑い8月のことで、雑誌の依頼でイタリア美術の特集取材があり、ローマに続いて訪れたのであった。いくつかの撮影リストをこなした後で、あまり予備知識もなく、担当編集者、コーディネーターと撮影に出向いたのが、通称ラ・スペコラ、解剖人形館だった〜味も素気もない動物の標本展示が続いた後で踏み入った部屋には、等身大の美女が妖艶な姿でガラスケースの中に横たわり、ポーズまで取っている。が、その腹部は断ち割られて内臓が引き出されている。分かってはいても、人形とは思えない精巧さ、まるで息をしているようなあどけない表情に引き込まれる。しかも、隔てられた時間の重みがそこにある。時を止めるとよく言うが、あのよどんだ空気と異様な静寂が息を飲むような興奮に誘う。ひょっとすると、この都市を描くことになるのではという予感が、その時に初めてよぎった。」ここを撮影することがフィレンツェという古都の魅惑の謎を解くことにほかならず、さらに「異邦人の女性」あるいは「女性という異界」に魅せられた(盟友奈良原一高氏の言葉)写真家佐藤氏の若き日の作品群を思い起こすと、クローズアップ撮影された解剖鑞人形の少女たちが、にわかに、代表作「冷たいサンセット」(1960)の超然とした、異界として存在するクールな女性たちのイメージと重なりあうようにも思えるのだ。(K)

é.t. : 03:15 PM | comment (0)

September 02, 2005

野波浩第三写真集『カオス』(改訂新版)いよいよ復刊!

永らくお待たせしました。写真家野波浩のデビュー作品集『アビス』(2000年に復刊)、第二作品集『ユリカ』(現在絶版)に続く第三作品集『カオス』がいよいよ増補改訂版でこの10月、8年ぶりに復刊されます。野波氏と編集部で初版本を再吟味し23点の図版を刷新、装幀・内容ともさらにブラッシュ・アップします。エーテー・オンラインショップにて予約を開始します(ご予約の方特典付)。(エーテー・アンソリット編集部)

é.t. : 06:24 PM | comment (0)

August 08, 2005

「H.R.ギーガーの世界」

ph_050808_02.jpg2004年9月から2005年2月までパリのアル・サンピエール美術館で開催されたH.R.ギーガー回顧展オープニングの模様をレポート。


展覧会主旨

今展覧会はギーガーが本格的な作家活動を始めた60年代半ばから今年度まで40年数年の軌跡を辿る包括的なレトロスペクティブ。エイリアンのクリエーターとして世に知られるギーガ−とアーティストギーガーの双方にウエイトを置いた作品構成になっており、初期の立体作品も含め貴重な作品も数多く、ギーガーワールドの変化と進化を存分に楽しめるパワフルでボリュームのある展覧会だ。


アル・サンピエールの会場構成
(ロビー吹き抜け/1階/2階)

1階吹き抜け奥では60年代のインクドローイングとフォトコラージュ40点余り(写真)と、ギーガーミュージアムに展示されることになっている「ゴーストトレイン」(詳細未確認)のミニチュアモデルを展示。


1階吹き抜け右、ギーガーミュージアムと題された円形の暗室では、映画「エイリアン」誕生までの歴史を60年代から遡り計100点余りの作品をフィーチャーしている。(タイトルや作品解説は一切なし) 暗幕が張られた入り口を入ると正面にはHRGIGERの文字のライトが暗い床に浮かび上がる。 右手にはショーケースに入った「エイリアン」のモデルがディスプレーされ、その後ろの部屋の中央には「ハルコネン」チェアとテーブルのセットが青白いライトに照らされて光っている。部屋を取り巻く壁にはギーガーが映画に取り掛かるずっと以前から画いていたインクドローイングをはじめ、映画制作当時の「エイリアン」のアイディアスケッチ等も含むモノクロ作品の数々がスポットライトのもと展示されている。天井から目線の高さで吊るされたライフサイズの「エイリアン」はまさに恐怖。ph_050808_03.jpgph_050808_04.jpgph_050808_05.jpgph_050808_06.jpg


1階吹き抜け中央の2階会場に上る螺旋階段を上った脇には、コンピュータ−チップのようなパターンを施したメタリックなテーブルと椅子がディスプレーされている。ph_050808_07.jpg


2階のセクションでは「通路Passage」と「風景Landscape」そして「Watch Abart」(‘93)のシリーズ計100点余りが展示されている。前者2ラインは60年半ばのペインティングにはじまり、「バイオメカにクスBiomecanics」 や「ネクロノミコンNecronomicon」でフィーチャーされた作品から、80年代のアーキテクチュアルな「NYシリーズ」&エアブラシ期, 最新作のスカルプチャーまで、制作年度は関係なく各モチーフに沿って集められた作品をディスプレー。(但しカテゴリー毎のタイトルや作品解説は一切なし)


見どころは90年代に入り3Dに移行してからの作品。2002年製作のアルミ製ライフサイズの「バイオノイド」、73年の「通路Passage」 「風景Landscape」をオリジンとする2004年製作の「Baby Landscape 」など。中でも67年の「Bullet-Baby」を発展させた高さ2メートル、幅1,4メートル、重さ220キロのアルミ製「Baby Machine」(’99)は圧巻。その他ではバンド「Korn」のフロントマンの依頼を受けて製作された特注の「バイオメカニカルマイクスタンド」や「エイリアン電話」なども。ph_050808_08.jpgph_050808_09.jpg


また「Watch Abart」のセクションではスウォッチの型を基にデザインされた長さ1,5メートル以上の巨大な腕時計のモデル4体がショーケースに入ってディスプレーされている。また時計のアイディア・デッサンの数々(sex toy付時計等)や時計を着けた腕や顔のスカルプチャーなどもあり、インダストリアルデザインからこの世界に入ったギーガーのアプローチとこだわりが見られる。ph_050808_10.jpg


展覧会協力パリ市

カタログ協賛スイス文化庁

レポーター:田村美穂、在ロンドンph_050808_11.jpg

é.t. : 08:05 PM | comment (0)

August 05, 2005

H.R.ギーガー『ネクロノミコン1』『ネクロノミコン2』奇跡的復刊なる!

ph_050808_01.jpg昨年8月の『ギーガ−ズ・エイリアン』を皮切りに今年1月、3月と続いた『ネクロノミコン1』『ネクロノミコン2』のリリースは、日本語版としてはいずれも4度目の復刊だ。これら大判の画集群が、しかもギーガー氏が世界的に知られる契機となった貴重なエディションが、この時期復刊できたことは奇跡的ともいえる。御承知のとおりリドリー・スコットと『ネクロノミコン』との出合いによってSFホラー映画の古典的名作「エイリアン」が誕生することになったのだが、このオリジナル版は1977年、スイス、バーゼルのスフィンクス社から刊行された(『ギーガ−ズ・エイリアン』も1980年にスフィンクス社から刊行)。ブック・デザイン、レイアウトはすべてギーガー氏自身が監修。従って各国語版はテキストのみの差し換えによってつくられている。
『ネクロノミコン』は、80年代に入ると出版不能になったスフィンクス社からエディション・クロコダイル(スイス)に引き継がれ、『ネクロノミコン2』『バイオメカにクス』等のシリーズはここから出版されることになる。したがってトレヴィル版、そして各国での『ネクロノミコン』シリーズはすべてエディション・クロコダイルから版権を取得している。問題は近年ギーガー氏とエディション・クロコダイルとの関係があまり良好ではなさそうな点にある。事実、以降の作品集はタッシェンなどから刊行されており、スイス本国版を含め『ネクロノミコン』シリーズは海外版もほとんど欠品のまま、ほとんど重版されていないのである。『ネクロノミコン』があまりにも大判なため制作費がおそろしく嵩むという事実もさることながら、著者と版元との関係もすくなからず影響していると推測できる。実は今回我々は両者の調停に最も時間を裂かれることになった。しかしながらこの大判の『ネクロノミコン』に我々が固執したのは、その大きさに理由があるからだ。図版下の作品サイズを一瞥していただきたい。オリジナル作品がいかに巨大であるか了解されるだろう。代表作の「墜道神殿」(『ネクロノミコン1』所収)は240cmx280cm、「風景」(『ネクロノミコン1および2』)は140cmx200cm〜70cmx100cm、「リー2」(『ネクロノミコン1』)は200cmx140cm、「エイリアン・モンスター」(『ギーガ−ズ・エイリアン』)は140cmx140cmといった具合。古典画家たちの作品と引きくらべれば決して大きくはないが、現代の基準からすれば十分に大きな作品であり、これはまぎれもなく画家の所業なのである。またこれらギーガーの絶頂期の作品群は原画を撮影したフィルムから制作されているが(コンディションが最も良いフィルム原稿を使用しているのだ)、以降の小型出版物は残念ながらオリジナル・フィルムが散逸してしまった以降の印刷物のため、他の印刷物からの複写(あるいは複写の複写)で画質が極めて劣悪なのだ。今回のアル・サンピエールのギーガー回顧展のカタログ*ですら複写原稿がめだち原画の神々しさをなかなか伺い知ることが出来ない。
いずれにせよ今回の復刊はエディシオン・トレヴィルからのたっての希望にギーガー氏が応えてくれた結果だった。我々は当時セゾングループの一員として1987年、はじめて日本全国を巡回する大々的なギーガー展をものし、これによって空前のギーガー・フィーバーが巻き起こった。飛行機嫌いで知られるギーガー氏の東京招聘にも成功し、ギーガー氏は今迄極東の小国という認識にすぎなかった日本のそのマーケットの大きさとファンの熱狂振りをまざまざと体感したのである(その後出版された『バイオメカニクス』はこの時の日本滞在がテーマになった)。現在スイスにあるギーガー・バーが、もともと東京白金につくられた店の転生であることを記憶されている方も大勢いらっしゃるのではないだろうか。

約20年前に携わった一連の日本語版のシリーズが何とかこうして復刊できたことは編集者として望外の悦びである。しかし、出版までの道筋を振り返ると、やはり今回はギーガー氏の好意による奇跡的な復刊だった。最新の年譜や旧版でギーガー氏が抱いていた色調に対する不満も氏の指示のもと修正を加えることができた。いずれも高額な作品集ではあるが、20年前、洋書では1万円はした画集たちである。天才H.R.ギーガーの作品集が最も高いクオリティで手元における最後の機会かもしれない。ファンならずともこのタイミングで大判『ネクロノミコン』シリーズを入手すべし、なのだ。(K)

é.t. : 08:20 PM | comment (0)

July 25, 2005

丸尾画報EX I』編集および造本について

ph_050725_01.jpg本書は、1996年トレヴィルから刊行した『丸尾画報I』の増補改訂新版です。旧本を土台にしながらも、新図版を加えるためにページネーションを大幅に改編。印刷の再現性やインクの着肉感を大幅にアップさせたので、旧版との色乗りの違いは歴然です!
当時収録できなかった名作(ジョン・ゾーン率いるネイキッド・シティの「トーチャーガーデン」「ネイキッド・シティ」等のアルバム群に分散掲載されていたイラスト群を発掘[1989〜1991]し初収録。ジョン・ゾーンからもあらたにオマージュをもらいました。)また、『新世紀SM画報』(朝日ソノラマ、2000年刊)以降、2005年直近までの新作を収録。さらにデッサン、単行本未収録の漫画(初出時は墨1色でしたが今回鮮やかな2色頁にバージョンアップ。しかも墨色にはミレニアム・ブラックというたいそう黒々と色がでるインクを採用しています)、丸尾氏によるシュールな新エッセイなどあらたなコンテンツを大増量、ページも旧版128頁から176頁にブローアップしました。旧版のハードカバー仕様は大重量になるため、箱装のソフトカバーに変更。さらに表紙にはムードたっぷりのグラシン紙掛け、贅沢な朱色の天地小口塗り。これによって昭和少年漫画誌の雰囲気を出せるようになりました。装幀は旧版に引き続きミルキィ・イソベ氏。「ポップ、サイケ、シュール、ミステリーが融合した丸尾末広一流の昭和デカダン美学の集大成!」という要求値の高いデザイン・コンセプトをみごとに実現していただきました。さらに、テキストの書体にもこだわり、旧漢字調にあらため昭和初期っぽい字面の雰囲気を追求。ページ内のグラフィックや文章面が擦れて古びた感じになっているのもミルキィさんのお遊びです。本文構成も変則的な横組頁(往之巻としました)、縦組頁(復之巻としました)の両開き仕様を採用。荒俣宏の名作「帝都物語」カバー画・挿画をはじめ、寺山修司原作戯曲用のポスター画などなど、丸尾末広昭和暗黒絵画満載です。8月には『丸尾画報EX・II』が刊行予定で、タコシェおよび青山ブックセンターでIとIIをあわせた刊行記念イベントも開催の予定(情報はおって本ウェブにてお知らせします)。丸尾さんも編集部も今回の画集の出来栄えには大満足でした。(制作室)

é.t. : 06:41 PM | comment (0)

丸尾画報』復刊秘話(その1)

丸尾画報1』復刊は、実は1999年暮れに一度企画された。たまたま翌年春、朝日ソノラマから『新世紀SM画報』が出版されることもあり、この本の刊行に連動して復刊を果たすのがよいのではないかと考えた。スパンアートギャラリーの種村氏がその年の夏に丸尾氏の原画展を企画するというので、当時谷中にあった丸尾邸に一緒にお邪魔した。
『新世紀SM画報』は、主に1996年刊の『丸尾画報1』『丸尾画報2』刊行時以降の画業をまとめたもの。一方パン・エキゾチカの復刊本は、旧版をほぼそのままに、丸尾氏と相談して画集未収録の幻の怪作を追加収録しバージョンアップをはかることにした。(月的編集子)

é.t. : 06:37 PM | comment (0)

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